デザイナーの採用は、2026年時点でも需要が伸びています。ただし求められる中身は変わりつつあり、AIツールを使いこなせることと、AIでは代わりにくい判断力や仕上げの力の両方が見られるようになっています。この記事では、Figmaが公開した調査レポートの数字をもとに、デザイナー採用の現状と求められるスキルを整理し、制作会社の現場の目線で「これから何を磨けばよいか」を解説します。
出典はFigmaの「2026年のデザイン職採用需要」レポートです。2025年10月2日から23日にかけて、米国・カナダ・英国・ドイツ・フランス・オーストラリア・日本の、デザイン採用担当者323人に行った調査です。本記事の数字はすべてこのレポートに記載されたもので、日本だけの数字ではない点にご注意ください。
調査の概要|323人の採用担当者に聞いた内容
この調査は、デザイナーを採用する側の本音を、7か国の担当者323人から集めたものです。デザイナー本人ではなく、採用する側の回答である点が、他の市場調査との大きな違いです。
調査の対象と期間
対象は米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、オーストラリア、日本のデザイン採用担当者です。調査期間は2025年10月2日から23日で、地域は北米、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)、APAC(アジア太平洋)に分けて集計されています。
技術系と非技術系の企業を分けて見ている
回答は、技術系企業と非技術系企業に分けても集計されています。AIプロダクトを作る企業と、ブランドやマーケティングのためにデザインを採る企業では、求める人材が違うためです。制作会社やフリーランスとして仕事を受ける側も、相手がどちらの企業かで見せ方を変える必要があります。
回答者数が323人なので、地域や業種で細かく分けた数字は、あくまで傾向として読みます。また、これは「採用する側がどう答えたか」の調査であり、実際に採用された人数や求人の件数を示すものではありません。
採用需要は安定または増加|ただし市場は厳しいと感じている
デザイン採用マネージャーの82%が、採用ニーズは安定または増加していると答えました。一方で、雇用市場全体の見方は厳しく、需要の数字と市場の実感にずれがあります。
採用ニーズ:47%が増加、35%が横ばい、18%が減少
過去6か月間の自社のデザイナー採用ニーズについて、増加が47%、同じが35%、減少が18%でした。減少より増加のほうが2倍以上多く、デザイナーを必要とする企業は増えています。
市場の見方:52%が低下、28%が横ばい、19%が改善
昨年と比べた雇用市場の状況については、低下したという回答が52%、同じが28%、改善したが19%でした。採用を増やした企業が多い一方で、市場が良くなったと考える人は約2割にとどまっています。
| 項目 | 増加・改善 | 同じ | 減少・低下 |
|---|---|---|---|
| 自社の採用ニーズ(過去6か月) | 47% | 35% | 18% |
| 雇用市場のセンチメント(昨年比) | 19% | 28% | 52% |

需要はあるのに、市場は厳しく感じられている。レポートはこの状態を、デザイナーの需要が高まっているという見方と、雇用市場が軟調だという一般的な認識が相反していると表現しています。仕事が増えているのに、誰でも採用されるわけではない、という読み方になります。

経験者が優先される|ジュニア採用との差
採用を増やした企業は、経験年数の長い人材を優先しています。シニアデザイナーの採用を増やしたと答えた企業は56%で、ジュニアデザイナーを増やした企業の25%を大きく上回りました。
役職・経験年数別の採用増の割合
| 経験・役職 | 採用を増やした企業の割合 |
|---|---|
| シニアデザイナー | 56% |
| 中堅レベルのIC(個人で働く人) | 37% |
| 中堅マネージャー | 30% |
| ジュニアデザイナー | 25% |
| シニアリーダーシップ | 20% |
成長の速い企業ほど、シニアを求める傾向
レポートによると、売上の成長が速い企業ほど、シニアデザイナーの採用を増やす割合が高くなっています。早く成果を出す必要がある企業は、育成の時間をかけられず、すぐに判断を任せられる人を求めるためと考えられます。
レポートは、経験豊富な人材を優先する流れを示しつつ、リーダーの多くが「シニアは経験を、キャリア初期のデザイナーは新しい視点や創造的な挑戦、既存の常識に疑問を投げる力をもたらす」という点で一致していると述べています。ジュニアの採用が減っているのではなく、増やす企業の割合がシニアより低い、という数字の読み方が正確です。

AIスキルは必須条件になりつつある
候補者に求められるAIスキルは、「あれば望ましい」ものから、採用の条件に近づいています。採用担当者の73%が、AIツールの習熟度がますます求められていると答えました。
AIツールの習熟度:73%が求められていると回答
デザインのプロセスでAIツールを使いこなせることが、より求められるようになったという回答が73%でした。地域別に見ると、APACの技術系企業では76%、非技術系企業では60%が、AIツールの習熟度の必要性が増えたと答えています。
AIプロダクトを設計する知識:79%が重視
AIを組み込んだ製品をデザインするための知識も、より重視されるようになったという回答が79%でした。APACの技術系企業では86%、非技術系企業では62%です。ツールを使えるだけでなく、AIを含む製品の体験を設計できるかが問われています。
レポートには、採用担当者のコメントも載っています。「デザイナーや、より広くプロダクトチームが日々の業務でAIを活用していない場合は採用しない」という趣旨の回答もありました。これは1人のコメントですが、AIの活用が当たり前の前提になりつつある空気は読み取れます。
一方で、「AIによって採用ニーズが減少したわけではなく、AIをワークフローに統合できる役割へ重点が移っている」という趣旨のコメントもあります。AIに仕事が置き換わるというより、AIを使う前提で役割が組み直されている、という姿が見えてきます。
求められるスキル|ビジュアルの仕上げ力は今も1位
AIを活用する力が求められる一方で、デザイナーの採用で最も重視されたのは、ビジュアルデザインと仕上げの力でした。AIを使えるだけでは足りず、見た目の完成度を自分で判断して整えられることが、依然として大きな差になります。
デザイナー採用で重視されるスキルのランキング
採用されたデザイナーに求められるスキルをトップ5で選んでもらった結果は、次のとおりです。
| スキル | デザイナー採用での割合 | デザイナー以外の採用での割合 |
|---|---|---|
| ビジュアルデザイン/仕上げ | 58% | 15% |
| デザインプロセスにおけるAIの活用 | 54% | 57% |
| デザインチーム外との協力 | 51% | 23% |
| システム思考・サービスデザイン | 47% | 25% |
| 製品戦略 | 46% | 36% |
| AI駆動型製品のデザイン | 39% | 48% |
| プロトタイプ作成 | 37% | 15% |

ビジュアルの仕上げ力は58%でトップ
デザイナーの採用では、ビジュアルデザインと仕上げが58%で最も高い数字でした。同じ項目はデザイナー以外の採用では15%にとどまり、デザイナーに固有の強みであることが分かります。
AIの活用は、デザイナーと非デザイナーの両方で高い
デザインプロセスでのAI活用は、デザイナーで54%、デザイナー以外で57%と、どちらも高い数字です。AIはデザイナーだけの道具ではなく、チーム全員が使う前提になっています。その中で、見た目を判断して仕上げる力が、デザイナーの専門性として残ります。
デザインチーム以外との協力が51%、システム思考とサービスデザインが47%と続きます。1人で美しいものを作る力だけでなく、他の部署と進め、仕組みごと設計する力も、採用の場面では見られています。
どんなプロジェクトのためにデザイナーを採るのか
採用の目的は、AIを組み込んだ製品だけではありません。AIを使わない通常のソフトウェア製品が63%で最も多く、AIを活用した製品が58%、サービスデザインが57%、デザインシステムが56%、ブランド・マーケティング・コミュニケーションが50%と続きます。
技術系企業はAI製品、非技術系企業はブランドを重視
レポートでは、技術系企業はAIプロダクトを優先する傾向が強く、非技術系企業はブランドとマーケティングを優先する傾向があると整理されています。同じデザイナーでも、どちらの企業を目指すかで、見せるべき実績が変わります。
ここからは、調査ではなく制作会社としての実感です。ロゴや名刺、Webサイトのように、ブランドを形にする仕事では、AIが出した案をそのまま使うのではなく、取捨選択して仕上げる作業に時間を使います。レポートが示した「ビジュアルの仕上げ力が依然として1位」という結果は、現場の感覚とも合っています。
デザイナー志望・発注者が今やっておくこと
調査の結果を踏まえると、AIを使いこなす練習と、見た目の良し悪しを判断する目を鍛えることの2つが、これから効いてきます。
志望者:AIを使った制作過程を説明できるようにする
ポートフォリオには、完成品だけでなく、どの段階でAIを使い、どこを自分で判断して直したかを書いておきます。「AIで作りました」で終わらず、「何を選び、何を捨てたか」を説明できると、採用担当者が求める判断力が伝わります。
志望者:実績は1つの領域に絞って見せる
採用側は、技術系ならAIプロダクト、非技術系ならブランドやマーケティングといった、目的別に人を探しています。幅広くできることよりも、「この領域なら任せられる」と分かる実績を前に出します。
発注者:デザイナーの募集条件を整理する
デザイナーを採用する側も、AIを使えることを条件にするのか、仕上げの力を重視するのかを先に決めておくと、募集文と面談の質問がぶれません。外部の制作会社に依頼する場合も、同じ整理がそのまま発注の条件になります。
どちらにも効く:他の人のデザインを見て選ぶ練習
見た目の良し悪しを判断する力は、他の人の作品をたくさん見て、自分ならどれを選ぶかを繰り返すことで鍛えられます。次の章で紹介するデザインバトルは、その練習に使えます。

デザインの目を鍛える場に「デザインバトル」
見た目を判断する力を試す手軽な方法として、当社が無料で公開している3つのデザインバトルがあります。2つのデザインを並べて好きなほうを選ぶだけで、会員登録は要りません。
名刺・ロゴ・Webサイトの3種類
- 名刺デザインバトル:名刺2枚から好きなほうを選びます。10戦すると「目利き一致率」が出ます。
- ロゴデザインバトル:ロゴ2点から選びます。仕組みは名刺と同じです。
- Webサイトデザインバトル:サイトのトップ画面(ファーストビュー)2つを比べて選びます。業種や制作のねらいも確認できます。
デザインの基本は、選ばれるロゴデザインのコツや選ばれる名刺デザインのコツでも解説しています。
自分の作品をエントリーする流れ
エントリーは審査制です。公開前に当社で内容を確認し、問題がなければ対戦に加わります。公開後の取り下げは、受付時に表示される取り下げURLから本人がいつでもできます。名刺は、個人の連絡先にモザイクを入れてから送る仕組みです。
自分の作品がどう選ばれるかを知りたい方は、Webサイトデザインバトルにエントリーするか、ロゴデザインバトルにエントリーするから試せます。
採用担当者や発注担当者にとっても、2つのデザインを比べて選ぶ体験は、判断の基準を自分で言葉にする練習になります。なぜこちらを選んだのか、を一言で説明できるようにしておくと、社内の合意が取りやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. 調査は日本の状況を表していますか?
日本の採用担当者も回答に含まれていますが、7か国の合計323人の調査です。日本だけの数字は、レポートからは読み取れません。傾向を見る資料として使い、日本の市場については別の情報も合わせて確認してください。
Q. デザイナーの需要は本当に増えていますか?
採用ニーズが増加したと答えた採用担当者は47%、減少は18%でした。需要が安定または増加している企業は82%です。ただし雇用市場が改善したと考える人は約2割で、仕事を得やすいかどうかは別の話です。
Q. ジュニアデザイナーは不利ですか?
採用を増やした企業の割合は、シニアが56%、ジュニアが25%でした。差はありますが、レポートはキャリア初期のデザイナーが新しい視点をもたらすことも評価しています。ジュニアは、AIを使った制作過程を説明できる実績で差をつけられます。
Q. AIが使えないとデザイナーになれませんか?
AIツールの習熟度がますます求められているという回答は73%です。使えないと不可能という意味ではありませんが、採用の場面ではAIを使った経験が見られる流れになっています。まずは普段の制作の一部にAIを取り入れ、その過程を記録しておくと役立ちます。
Q. AIがあれば、ビジュアルの仕上げ力は不要になりますか?
デザイナー採用で重視されたスキルの1位は、ビジュアルデザインと仕上げで58%でした。AIで案を出せる時代でも、良し悪しを判断して整える力は、採用で最も見られています。
Q. 調査レポートの全文はどこで読めますか?
Figmaの公式サイトで、フォームに入力するとPDFをダウンロードできます。本記事の数字は、そのレポートに記載された内容です。
Q. デザインバトルに参加するのに登録は必要ですか?
投票するだけなら、会員登録は不要で無料です。作品をエントリーする場合は、審査のうえで公開されます。