Vercelとは?料金・使い方と無料枠の商用利用|制作会社が解説

Vercel(バーセル)とは、GitHubなどのリポジトリと連携して、Webサイトやアプリを自動でビルド・公開できるクラウドホスティングサービスです。サーバーの構築もSSL証明書の設定もCIの構築も不要で、コードをpushするだけで本番公開まで完了します。無料のHobbyプランがあるため学習用途で使われることが多い一方、規約上は非商用の個人利用に限られており、受託制作で使うならPro以上が前提になります。この記事では2026年9月時点の公式情報をもとに、料金の仕組み・無料枠の上限・デプロイ手順・つまずきやすい点、そしてWeb制作会社の実務でVercelをどう使い分けるかまでをまとめます。

目次

Vercelとは?30秒でわかる要点

Vercelは、Gitリポジトリと連携してWebサイトを自動公開するホスティングプラットフォームです。静的サイト・SSR(サーバーサイドレンダリング)・サーバーレス関数を、同じ1つのプロジェクトに同居させて配信できるのが最大の特徴です。

black laptop computer turned on on table
Photo by James Harrison on Unsplash

Vercelの読み方と運営会社

Vercelは「バーセル」と読みます。日本語の記事では「ヴァーセル」と表記されることもありますが、同じサービスを指します。運営はアメリカのVercel Inc.で、Reactのフレームワークとして広く使われているNext.jsの開発元でもあります。つまりVercelは「Next.jsを作っている会社が、Next.jsを最も素直に動かせるように用意したホスティング」という関係にあります。

ただしNext.js専用ではありません。公式のフレームワークサポート表には、Next.jsのほかSvelteKit・Nuxt・Astro・Remix・TanStack・Vite・Create React Appが載っています。

Vercelが肩代わりしてくれる「公開までの面倒」

従来、作ったサイトを公開するにはサーバーを借り、Webサーバーを設定し、SSL証明書を取得・更新し、ビルドしたファイルを転送する仕組みを整える必要がありました。Vercelはこの工程をまとめて引き取ります。具体的には次の作業が消えます。

  • サーバーの契約・OSやミドルウェアの設定
  • SSL証明書の取得と更新(Let’s Encryptの証明書が自動発行・自動更新される)
  • ビルドとデプロイの仕組み作り(GitへpushするとVercelが自動でビルドする)
  • CDNの設定(世界126拠点のPoPから配信される)
  • FTPやSSHでのファイル転送作業

レンタルサーバーとの一番大きな違い

エックスサーバーやさくらインターネットのような共用レンタルサーバーとVercelは、そもそも役割が違います。レンタルサーバーは「PHPとMySQLを動かす場所」で、WordPressのファイルを置いて動かすことを前提にしています。対してVercelは「Gitからソースコードを取り出してビルドし、その結果を配信する場所」です。

この違いから、重要な結論が1つ出ます。VercelにWordPressをそのまま載せることはできません。PHPの実行環境とMySQLデータベースを提供していないためです。この点は後述の「WordPressとの使い分け」で詳しく整理します。

Vercelで何ができるのか|主要機能5つ

Vercelの機能は「公開と確認の手間を減らすもの」に集約されます。機能名だけ覚えても意味がないので、制作のどの工程が消えるのかに置き換えて見ていきます。

Git連携による自動デプロイ

GitHub・GitLab・Bitbucketのリポジトリを接続すると、mainブランチへのpushをきっかけにVercelが自動でビルドし、本番環境を更新します。デプロイ作業そのものがなくなるため、「更新を反映し忘れた」「転送漏れでファイルが古い」といった事故が構造的に起きません。過去のデプロイは履歴として残るので、問題が出たときは以前のデプロイへロールバックできます。

プレビューデプロイ(ブランチごとの確認URL)

main以外のブランチにpushすると、そのブランチ専用のURLが自動で発行されます。本番に影響を与えずに実物を確認できるため、ステージング用のサーバーを別に立てる必要がなくなります。制作会社にとってはここが一番効く機能で、詳しくは後半の「制作会社の現場でどう使うか」で運用込みで解説します。

Vercel Functionsとサーバーレス実行

フォーム送信の受け口や外部APIの中継など、サーバー側の処理が必要な部分は「Vercel Functions」として同じプロジェクト内に置けます。対応ランタイムはNode.js・Python・Edge・Bun・Rustです。2025年4月23日以降に作られたプロジェクトでは、1つのインスタンスで複数リクエストを処理してコールドスタートとコストを抑える「Fluid compute」が既定で有効になっています。

画像最適化とキャッシュ制御

画像を配信時にWebPなどへ変換・リサイズする画像最適化機能があり、Core Web Vitalsの改善に直結します。また更新のあったページだけを再生成するISR(インクリメンタル静的再生成)に対応しており、Next.js・SvelteKit・Nuxt・Astroで利用できます。ただし画像最適化はRemixが非対応、ストリーミングSSRはNuxtが非対応など、フレームワークによって使える機能に差があります。採用フレームワークを決める前に公式のサポート表を確認してください。

独自ドメインとHTTPSの扱い

プロジェクトに独自ドメインを追加すると、Vercelが自動でLet’s Encryptに証明書を要求し、DNSの検証が通り次第HTTPSが有効になります。証明書は有効期限の14〜30日前に自動更新されます。無料のHobbyプランでも独自ドメインと自動SSLは使えます。なおカスタムSSL証明書を自分でアップロードできるのはEnterpriseのみで、/.well-known のパスはリダイレクトや書き換えができない予約領域になっています。

ドメインを既存サイトからVercelへ向け替える場合は、DNSの切り替え手順そのものは通常のサーバー移行と同じ考え方です。止めずに切り替える段取りはサーバー移行でサイトを止めない手順|TTLとSSLを先に片づけるで解説しています。

Vercelの料金プラン【2026年9月時点】

Vercelの料金はHobby(無料)・Pro(月20ドル)・Enterprise(個別見積もり)の3段構成です。ただしProは「20ドル払えば使い放題」ではありません。基本料に利用クレジットが含まれ、それを超えると従量課金に切り替わる仕組みです。ここを誤解すると想定外の請求につながるので、構造から押さえます。

a calculator and a pen sitting on top of a piece of paper
Photo by Aaron Lefler on Unsplash

3プランの基本構成

項目HobbyProEnterprise
月額0ドル20ドル個別見積もり
商用利用不可(非商用の個人利用のみ)可可
プロジェクト数200無制限カスタム
1日のデプロイ数1006,000カスタム(参考値24,000)
同時ビルド数1最大500カスタム
1デプロイのビルド時間上限45分45分45分
ビルドマシン2vCPU / 8GB4vCPU / 8GB(最大30vCPU・60GB)カスタム
ランタイムログ保持1時間1日3日
Git組織所有リポジトリの接続不可可可
出典:Vercel公式ドキュメント(Plans / Limits)。2026年9月30日時点

Pro(月20ドル)に含まれるもの

Proの20ドルはプラットフォーム料で、内訳は「デプロイ可能なチームシート1席」と「20ドル分の利用クレジット」です。クレジットは各機能の使用量に応じて消費され、使い切った分から従量課金に切り替わります。未使用分は月末で消滅し、翌月にリセットされるため繰り越しはできません。

  • 追加シート(Owner / Member)は1席あたり月20ドル。閲覧のみのViewerシートは無料・無制限
  • Flat Rate CDNの最下位ティア(月間CDNリクエスト100万件+データ転送1TB)が追加費用なしで含まれる
  • 有料チームにつき初年度無料の独自ドメイン1つ(対象TLDは .app .dev .online .site .space .store .tech .website)
  • リージョン別料金の利用はProプラン以上のみ

1ドル150円で換算すると月約3,000円ですが、為替と従量課金の分で変動します。見積もりに載せるときは「基本料+想定超過分」の形で書いたほうが安全です。

従量課金の単価と東京リージョンの扱い

クレジットを使い切ったあとの単価は機能ごとに決まっています。日本向けサイトで実際に関わってくるのは東京リージョン(hnd1)の単価なので、基準レートと並べて載せます。

課金対象基準レート東京リージョン(hnd1)
Fast Data Transfer1GBあたり 0.15〜0.35ドル1GBあたり 0.16ドル
CDN Requests100万件あたり 2.00〜3.20ドル100万件あたり 2.60ドル
Fast Origin Transfer1GBあたり 0.06〜0.43ドル1GBあたり 0.27ドル
Function Invocations100万件あたり 0.60ドル—
Fluid Active CPU1時間あたり 0.128ドルから1時間あたり 0.202ドル
Provisioned Memory1GB-hrあたり 0.0106ドルから1GB-hrあたり 0.0167ドル
画像最適化(変換)1,000件あたり 0.05ドル1,000件あたり 0.0661ドル
画像最適化(キャッシュ読み)100万件あたり 0.40ドル—
画像最適化(キャッシュ書き)100万件あたり 4.00ドル—
出典:Vercel公式ドキュメント(Fair Use Guidelines / Regional Pricing)。2026年9月30日時点

東京(hnd1 / ap-northeast-1)と大阪(kix1 / ap-northeast-3)にコンピュートリージョンがあり、全体では19のコンピュートリージョンと126拠点のPoPで構成されています。

Proの有料アドオンは見積もりに直接響く

Proに含まれない機能は月額のアドオンになります。とくにパスワード保護はクライアント案件で必要になりやすいので、金額を把握しておく必要があります。

アドオン料金
Password Protection保護するプロジェクト1つにつき月20ドル
Preview Deployment Suffix月100ドル
Static IPsプロジェクトあたり月100ドル+Private Data Transfer
Flags Explorer月250ドル
SAML Single Sign-On月300ドル
HIPAA BAA月350ドル
Web Analytics Plus月10ドル
Speed Insights Plusプロジェクトあたり月10ドル+10,000イベントごとに0.65ドル
Observability Plus100万イベントあたり1.20ドル
出典:Vercel公式ドキュメント(Pro Plan)。2026年9月30日時点

想定外の請求を防ぐ設定

従量課金で怖いのは、アクセス急増やクローラーの巡回で気づかないうちに費用が伸びることです。Vercelにはクレジットの75%到達時に自動通知する仕組みと、上限額を設定できるSpend Managementがあります。新規顧客は既定で「請求サイクルあたり200ドル」でSpend Managementの通知が有効になっています。案件で使う場合は、この上限を想定予算に合わせて明示的に設定し直すのが前提です。

無料のHobbyプランはどこまで使えるか|商用利用の線引き

Hobbyプランは無料で独自ドメインもSSLも使えますが、規約上は非商用の個人利用に限定されています。制作費を受け取って作ったサイトは商用に該当するため、受託案件でHobbyを使うことはできません。ここが実務上もっとも重要な制約です。

Hobbyの無料枠(月あたり)

項目無料枠
Fast Data Transfer100GB
CDN Requests100万件
Fast Origin Transfer10GB
Function Invocations100万件
Fluid Active CPU4時間(4 CPU-hrs)
Provisioned Memory360 GB-hrs
画像最適化(変換)5,000件
画像最適化(キャッシュ読み/書き)300,000件/100,000件
Web Analytics イベント50,000件
Speed Insights イベント直近30日で10,000件(チーム共有)
Blob Storage1GB
出典:Vercel公式ドキュメント(Hobby Plan)/Pricing。2026年9月30日時点

個人のポートフォリオサイトや学習用のアプリであれば、この枠で足ります。ポートフォリオを公開する前提で作るなら、載せる内容の設計はWebデザイナーのポートフォリオサイトの作り方|制作会社が見ている7つのポイントも参考にしてください。

枠を超えたときに起きること

Hobbyには従量課金がありません。そのかわり、無料枠を超えると多くの場合その機能が30日経過するまで使えなくなります(Web Analyticsは7日)。つまり課金されるのではなく止まります。個人利用なら問題になりにくい挙動ですが、「無料のまま少しだけ商用で様子を見る」といった運用には耐えられません。

Vercelが「商用」と定義しているもの

公式のFair Use Guidelinesには「Hobbyチームは非商用の個人利用に限定される。プラットフォームのあらゆる商用利用にはProまたはEnterpriseプランが必要」と明記されています。そして商用の定義は「プロジェクトの制作に関わった誰かが金銭的利益を得る目的で使われるあらゆるデプロイメント」で、コードを書いた有償の従業員やコンサルタントも含まれます。公式が挙げている例は次のとおりです。

  • 訪問者からの支払いを求める、または支払いを処理する
  • 商品やサービスの販売を告知する
  • サイトの制作・更新・ホスティングに対して報酬を受け取っている
  • アフィリエイトリンクがサイトの主目的になっている
  • Google AdSenseなどの広告を掲載している

一方、寄付(Donations)の募集は商用利用に当たらないと明記されています。判断に迷うケースはVercelサポートに問い合わせるよう公式が案内しています。

受託制作でHobbyが使えない理由

上の定義に照らすと、制作会社やフリーランスがクライアントから制作費を受け取って作ったサイトは、公開した時点で「サイトの制作に対して報酬を受け取っている」に該当します。サイトの内容が広告も決済も含まない会社案内だけであっても同じです。つまり受託案件でHobbyプランを使うのは規約違反になります。「とりあえず無料で公開して、様子を見てからProにする」という進め方は取れないため、見積もり段階からProの費用を織り込んでおく必要があります。

Vercelの使い方|GitHub連携から公開までの6ステップ

Vercelの公開手順は、リポジトリを選んでDeployを押すだけで完了します。所要時間は初回でも10分程度です。ここでは実際の順番と、各ステップで確認すべき点を並べます。

black flat screen computer monitor
Photo by Artturi Jalli on Unsplash

ステップ1|GitHubにリポジトリを用意する

先にソースコードをGitHub(またはGitLab・Bitbucket)へpushしておきます。ここで注意が必要なのは、HobbyチームはGitの組織(Organization)が所有するリポジトリに接続できないという制限です。会社のGitHub Organizationでコードを管理している場合、無料プランのままでは最初の接続段階で詰まります。個人アカウント所有のリポジトリで試すか、Proにする必要があります。

ステップ2|Vercelアカウントを作成してリポジトリをImportする

GitHubアカウントでVercelにサインアップすると、そのままリポジトリ一覧が表示されます。公開したいリポジトリのImportを選びます。初回はVercelのGitHub Appに対してアクセスを許可する画面が出るので、全リポジトリではなく必要なリポジトリだけを選んで許可するのが安全です。

ステップ3|フレームワークの自動検出とビルド設定を確認する

Vercelがpackage.jsonを読んでフレームワークを自動判定し、ビルドコマンドと出力ディレクトリを埋めてくれます。Next.jsやAstroなど公式サポート対象なら、ほぼそのままで通ります。モノレポ構成やビルドコマンドを独自に組んでいる場合だけ、Root Directoryとビルドコマンドを手で直します。

ステップ4|環境変数を登録する

APIキーや外部サービスの接続情報は、コードに書かず環境変数として登録します。ローカルの .env ファイルはGitに含めないため、ここで登録し忘れると本番だけが動かなくなります。環境変数は1プロジェクト1環境あたり1,000件まで、名前と値の合計サイズは64KBまでです。Production・Preview・Developmentのどの環境に適用するかを選べるので、本番と検証で別の値を使う場合は環境ごとに登録します。

ステップ5|Deployを実行して発行URLを確認する

Deployを押すとビルドログが流れ、完了するとプロジェクト名.vercel.app のURLが発行されます。ビルドは1デプロイあたり45分が上限で、これを超えると打ち切られます。以降はmainブランチへpushするたびに自動で再デプロイされます。

ステップ6|独自ドメインを割り当てる

プロジェクトのSettings内のDomainsから独自ドメインを追加します。画面に表示されるAレコードまたはCNAMEの値を、ドメインのDNSに設定します。DNSが伝播するとVercelが自動で証明書の検証を行い、HTTPSが有効になります。Aレコードの値は必ず自分のプロジェクト画面に表示されたものを使ってください。ドメインはプロジェクトあたりHobbyで50件、Proは実質無制限(ソフトリミット100,000件)です。

Vercelでつまずきやすいポイントと対処法

Vercelで詰まる原因はほぼ4つに絞れます。症状から原因を引けるように、確認する順番で並べます。

ローカルでは動くのに本番で落ちる

最初に疑うのは環境変数です。ローカルの .env はGitに入っていないため、Vercel側に同じ変数を登録していないと本番だけが失敗します。変数名のタイプミス、適用環境(Production / Preview / Development)の選択漏れ、ビルド時に必要な変数なのか実行時に必要な変数なのかの取り違えが典型です。ビルドログのエラー箇所に変数名が出ていないか確認してください。

ビルドが45分で打ち切られる

1デプロイのビルド時間上限は全プラン共通で45分です。ページ数が非常に多い静的サイトや、ビルド時に全データを取得する構成だとここに当たります。対処は、ビルド時に全ページを生成せずISRやオンデマンド生成に切り替える、依存パッケージのキャッシュを効かせる、Proでビルドマシンのスペックを上げる(4vCPUから最大30vCPU)のいずれかです。

会社のリポジトリが接続できない

前述のとおり、HobbyチームはGitの組織が所有するリポジトリに接続できません。エラーの文面だけを見ると権限設定の問題に見えるので、権限を何度も見直して時間を溶かしがちです。会社のOrganizationでコードを管理しているなら、そもそもProが必要だと理解しておくと早く解決します。

関数の応答が遅い・タイムアウトする

Vercel Functionsの既定リージョンは米国ワシントンD.C.(iad1)です。日本のユーザー向けのサイトでデータベースも国内にある場合、往復の遅延がそのまま体感速度に乗ります。日本向けなら東京(hnd1)へ明示的に変更してください。実行時間の上限はFluid computeを使う場合、既定300秒・最大でHobby 300秒/Pro 800秒です。2025年4月23日より前に作られFluid未使用のプロジェクトは、Hobbyが既定10秒・最大60秒、Proが既定15秒・最大300秒と短いので、古いプロジェクトで詰まったらここを確認します。なおEdgeランタイムのMiddlewareは平均CPU時間50ms以内という制約があり、重い処理は書けません。

Web制作会社の現場でVercelをどう使うか

制作会社がVercelを案件で使う場合、技術的な話より先に「誰の契約で、確認環境をどう守り、いくらで見積もるか」を決める必要があります。ここを詰めないまま進めると納品時に困ります。

Four people in a meeting around a black table in a modern office
Photo by Cherrydeck on Unsplash

クライアント確認はプレビューURLに寄せる

プレビューデプロイは、制作会社にとっては「ステージング用サーバーを立てずに先方レビューを回せる機能」です。修正ごとにブランチを切ってpushすれば、その修正だけが載ったURLが自動で発行されます。本番と検証でサーバー環境が違うことによる「検証では出なかった不具合」も起きにくくなります。従来かかっていた検証サーバーの構築・維持の工数と費用が、そのまま消える計算になります。

検証環境を第三者に見せないための選択肢と費用

公開前のサイトが検索エンジンや無関係な第三者に見られないようにする必要があります。Vercelの選択肢はプランで変わります。

保護方法HobbyPro
Vercel Authentication(Vercelアカウントでの認証)利用可利用可
Shareable Links(共有リンク)利用可利用可
Deployment Protection Exceptions利用可利用可
Password Protection(パスワード保護)不可有料アドオン(1プロジェクト月20ドル)
WAFのIPブロック/カスタムルール最大3/最大3最大100/最大40
出典:Vercel公式ドキュメント(Hobby Plan / Pro Plan)。2026年9月30日時点

クライアントにVercelアカウントを作ってもらうのが難しい場合、実務ではパスワード保護が必要になります。これはProでも別料金(保護するプロジェクトごとに月20ドル)なので、見積もりに入れ忘れないようにします。共有リンクで済ませる運用も可能ですが、リンクが転送されれば誰でも見られる点は理解した上で選ぶ必要があります。

誰の契約で作るか(納品後の移管を見据える)

自社Teamで作って納品時にクライアントへ移すか、最初からクライアント名義のTeamで作るかは、着手前に決めておくべき論点です。後から移す場合、ドメインやストレージは手動での移管作業が発生し、プランをダウングレードするとメンバーが外れるといった副作用もあります。サイトの運用をクライアント側で完結させる前提なら、最初からクライアントのアカウントでTeamを作り、制作会社はメンバーとして入るのが素直です。逆に保守込みで受け続ける前提なら、自社Teamで一括管理したほうが運用は楽になります。

運用費の見積もりに積むもの

Vercelを使う案件でランニングコストとして積むべきものは、Proの基本料(月20ドル)、想定超過分の従量課金、必要ならパスワード保護(月20ドル)、そしてドメイン費用です。共用レンタルサーバーの月額と比べると単純な金額は上がる場合がありますが、検証サーバーの維持とデプロイ作業の工数が消える分を合わせて説明すると納得を得やすくなります。Spend Managementの上限額をいくらに設定したかも、運用ルールとして先方に共有しておくべき項目です。

WordPressとの使い分け|Vercelに向く案件・向かない案件

日本のWeb制作では、Vercelの比較対象はNetlifyなどの同種サービスよりも「WordPress+レンタルサーバー」になります。結論としては、クライアントが自分で更新するコーポレートサイトはWordPressが有利、表示速度やフロント実装が要件の中心にある案件はVercelが有利です。

white and blue printer paper
Photo by Souvik Banerjee on Unsplash

VercelにWordPressはそのまま載らない

繰り返しになりますが、VercelはPHPとMySQLの実行環境ではないため、WordPressのファイル一式をアップロードして動かすことはできません。「Vercelに移行すればWordPressが速くなる」という話ではない点は、最初に整理しておく必要があります。

ヘッドレスWordPress+Vercelという構成

公式が案内している方法は、WordPressを管理画面とAPI(コンテンツの入れ物)として残し、表示側をNext.jsなどで作ってVercelに載せるヘッドレス構成です。更新はこれまでどおりWordPressの管理画面から行い、表示は高速なフロントで返せます。ただし表示側を1から実装するため制作コストは上がり、テーマやプラグインで実現していた機能は作り直しになります。プレビューやカスタマイザーなどWordPress前提の機能も、そのままでは使えません。

判断基準の早見表

判断軸WordPress+レンタルサーバーが向くVercelが向く
更新の主体クライアント自身が管理画面から更新する制作側が更新する/更新頻度が低い
更新者のリテラシーWeb知識がない担当者が触るGitを扱える人がいる
機能の作り方プラグインで実現したい(フォーム・予約・EC)実装で作る/外部SaaSと連携する
要件の中心ページ追加と記事更新の運用表示速度・アニメーション・アプリ的な挙動
初期費用抑えやすいフロント実装分だけ上がる
月額共用サーバーで数百円からPro 20ドルから+従量
保守の内容WordPress本体・プラグインの更新と脆弱性対応依存パッケージの更新とビルドの維持

実務での落とし込み

制作の現場では、コーポレートサイトやブログ運用が中心の案件はWordPressのまま共用サーバーで組み、予算と保守性を優先します。一方で、動きのある演出が要件になっている案件や、キャンペーンLP・アプリ的な機能を持つサイトはVercelの構成が合います。フロント側の実装が主役になる案件の考え方は動きのあるWebサイトはこう作る|PixiJS・GSAP・Locomotive Scrollの役割と実装でも触れています。どちらが優れているかではなく、更新する人と要件で選ぶのが正解です。

2026年時点のVercelの新しい動き

Vercelはここ1〜2年で実行モデルとAI関連の機能を大きく増やしています。名前を知っておくと公式ドキュメントを読むときに迷いません。

  • Fluid compute … サーバーレスの柔軟さとサーバーの特性を併せ持つ実行モデル。1インスタンスで複数リクエストを処理してコールドスタートを抑え、実際にCPUを使った時間に対して課金する(Active CPU課金)。2025年4月23日以降の新規プロジェクトで既定
  • v0 … 自然言語のプロンプトからWebアプリやUIを生成するVercelのAI開発ツール
  • AI SDK … JavaScriptやTypeScriptでAI機能(ストリーミングUIなど)を実装するためのSDK
  • AI Gateway … OpenAI・Anthropic・Google・xAIなど複数プロバイダのモデルを単一のAPIで扱い、ルーティングやフォールバック、キャッシュを設定できる仕組み

これらの料金体系は本記事の調査時点で個別に確認できていないため、導入を検討する際は公式の該当ページで最新の条件を確認してください。

よくある質問(FAQ)

Vercelの読み方は?

「バーセル」と読みます。Next.jsを開発しているアメリカのVercel Inc.が提供するホスティングプラットフォームです。

Vercelは無料で使えますか?

Hobbyプランが無料で、月間100GBのデータ転送・100万回の関数実行などの枠が含まれます。ただし非商用の個人利用に限られます。

無料プランで商用利用できますか?

できません。Vercelは「制作に関わった誰かが金銭的利益を得る目的のデプロイ」を商用と定義しており、サイト制作の報酬を受け取っている場合も商用に該当するため、Pro以上が必要です。

Vercelの料金はいくらですか?

Proは月20ドルで、1シートと20ドル分の利用クレジットが含まれます。クレジットを使い切った分は従量課金になり、Enterpriseは個別見積もりです。

VercelでWordPressは動きますか?

そのままでは動きません。WordPressを管理画面とAPIとして残し、表示側をNext.jsなどで作ってVercelに載せるヘッドレス構成が公式に案内されている方法です。

日本にリージョンはありますか?

東京(hnd1)と大阪(kix1)にコンピュートリージョンがあります。ただしVercel Functionsの既定は米国のiad1なので、日本向けなら明示的に変更する必要があります。

クライアント案件で使うときの注意点は?

Pro以上が前提になること、HobbyチームではGit組織が所有するリポジトリに接続できないこと、公開前の環境をパスワードで守るには保護するプロジェクトごとに月20ドルのアドオンが必要なことを、見積もり段階で織り込んでおく必要があります。

まとめ

Vercelは「公開までの工程をまとめて肩代わりしてくれるホスティング」です。Git連携の自動デプロイとプレビューURLは、制作の現場では検証サーバーを1つ減らせるだけの価値があります。一方で、無料のHobbyは非商用の個人利用限定であり、受託案件では使えません。Pro(月20ドル)の基本料にクレジットが含まれる従量課金の構造、パスワード保護が別料金であること、関数の既定リージョンが米国であることを押さえておけば、見積もりと運用設計で外すことはありません。そしてWordPressが向く案件は無理にVercelへ寄せず、更新する人と要件で選ぶのが実務の答えです。

Vercelを使った構成が自社サイトに向いているのか、WordPressのまま運用したほうがよいのか判断に迷う場合は、THREE D PLUSまでお気軽にご相談ください。要件と運用体制をうかがったうえで、適した構成をご提案します。

本記事の料金・上限に関する数値は、2026年9月30日時点のVercel公式サイト(vercel.com)の記載にもとづいています。プランや単価は変更される場合があるため、契約前に公式ページで最新の条件をご確認ください。

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